自分のからだの状態を知り、必要な治療に取り組みましょう

診療の解説

1.不妊治療

タイミング法と人工授精

タイミング法とは、排卵に合わせてSexのタイミングを提案する方法です。
人工授精(AIH)とは、採取した精液から、元気よく動く受精する能力の高そうな精子を集めて、極細のカテーテル(チューブ)を使って子宮内に直接注入する治療法です。

これに、ひとり一人の卵巣機能を丁寧に調べ注)、子宮環境を整える治療をあわせて行います。

ご夫婦にタイミング指導をする、また人工授精を計画する場合に最も大事なことは、いつ行うのがベストなのかということです。タイミングをはかる場合には、排卵日がいつで、それに向けていかに子宮環境を整えるかを考慮しなければなりません。また人工授精の場合はタイミングと組み合わせることも多いのですが、排卵時期を適確に予測し、子宮の環境だけでなく卵子の成熟具合と精子の寿命をも考慮し、いつが最も妊娠率が高くなるかの判断が必要になります。この排卵時期の正確な予測には、排卵チェッカーだけではお二人にとってのベストタイミングを見つけることは出来ないのです。

また精子の数だけでなく受精能力をも見定めて排卵する卵子の数を調整し、妊娠率は高いが双子以上にならないよう注意を払い、タイミングと人工授精を組み合わせて治療しますので、精子がある程度の能力をもっていれば、当院では体外受精しなくても多くの方々が妊娠しています。

それが当院のめざす“ひとり一人のからだにあった治療法”であり、
からだに無理のない経済的な治療
でもあります。

注)卵巣機能を調べるということは、卵巣内に残存する卵の数や刺激に対する反応、その後のホルモン分泌の具合を評価しているのです。つまりこれは卵子の質を反映しています。

体外受精と顕微授精

体外受精とは、女性の卵巣内から取り出した卵子を体外で精子を加えて受精させる治療のことです。
顕微授精とは、体外受精で取り出した卵子に、顕微鏡下で見ながら精子を直接卵子に注入し、授精させる方法です。

卵子・精子の質や受精能力に??が見え始めた時には、体外受精や顕微授精を含めたIVFを提案させて頂きます。

では、ステップアップする時に一番の問題はなんでしょうか?
二人目だからでしょうか、それとも不安や仕事との調整でしょうか、費用でしょうか

このため人工授精と体外受精の間に、もう一つのステップを提案します
これが “トライアルIVF” です

これは、IVFにすすむには決心がつかないとか、費用が心配とか、仕事との調整ができるだろうか、といった不安をお持ちのご夫婦のために、AIHと同様に自然に近い刺激で1-2個の卵子を育て、卵子の存在確認と精子の受精能力を見るため体外受精のみ行い、そして受精した卵子を2-3日後に移植するというものです。顕微授精や凍結はいたしません。通院回数はAIHとほぼ一緒ですので注射も少なく、費用も初回の助成金の中で十分納まります。受精や発育がうまくゆかなければ、その後は通常の刺激として顕微授精が必要となりますので、その後の方針もはっきりします。

通常の体外受精(顕微授精を含む)の場合には

安全に十分配慮しつつ、ひとり一人の卵巣の能力の中で最大数の卵子を最低量の注射で育てるよう工夫します。ひと口に排卵誘発といっても、体質や年齢はもちろんですが、卵巣の手術を経験している場合では、特に薬に対する反応はまちまちで、これにより刺激前の準備から、そして刺激に使う薬や投与量もすべてうまく調整しないと良質な卵子は出来ません。当院ではそれまでの治療の過程でひとり一人の特性を十分に把握しているので、1回の治療でも最大の効果を上げることができるのもこのためです。
精子の数が極端に少ない場合や、年齢的にも卵巣的にも余裕がない場合には、始めから通常のIVF(ICSI)に挑戦する方が、卵子の数も多く新鮮胚移植やその後の凍結胚移植のことも考慮すると、結果的に妊娠に近づける可能性は高くなるのは言うまでもありません。

どちらの場合にも、採卵時に麻酔をいたします。当院では数種類の作用の異なる麻酔薬をベストミックス(ひとり一人に合わせた麻酔の組み合わせ+投与量の加減)で使用しています。採卵後は病室でゆっくりお休みいただきます。

この理念に基づき当院では『妊娠に必要なからだ作りの提案』を開院当初より掲げております。このため昼には高蛋白で低カロリーをコンセプトに計算された温かく美味しい食事を召し上がっていただいています。
採卵後3-4時間経過を見て、更に昼が食べられたのも確認、状態が安定したのを再度確認して皆様にお帰り頂いています。

2.不育症と着床障害

当院は不育症・着床障害の治療実績も数多くあります。
現在では、抗リン脂質抗体症候群や、血栓症のできやすい体質を調べることが主流です。
でも低用量アスピリン療法・ヘパリン注射が必要な方が、これほど多いのでしょうか?

実は
リスクのある意味のない治療が行われている可能性
があります!

特に血栓症と関連する項目は1回の検査で決めつけるのは大変危険です。
妊娠初期の5-6週に再検査すると、正常化している方も非常に多く認めら、治療の必要性の根拠が認められない方も非常に多くいるのです。また最近では、免疫細胞の異常にて胎児の着床が妨げられているという説に基づく、免疫抑制剤(タクロリムスなど)を用いた治療も紹介されています。理論的にはその可能性は認めるにしても、安全性や有効性に関してはデータが不十分なこともあり、当院では現時点では取り入れておりません。

ドクターなら誰もが知っている一番多い流産の理由は、受精後の染色体異常によるものです。着床前診断の結果もこれを裏付けています。

私が調べて次に多いのが、
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性
の場合です。

卵子の質と直接関係しますが、卵子はホルモンを分泌しないのです。卵子のまわりの細胞がホルモン分泌を担っています。PCOSの女性では、この細胞の数が少なくホルモン分泌が著しく不良な場合、妊娠しても育たないのです。これらのホルモンの妊娠初期の基準値は教科書にも出ていないのです。このため私が自分で集めたデータですが、流産をくりかえすPCOSの女性では非常に低いことがわかりました。この結果は数年前に欧州生殖医学会で発表しましたが、関心を持った演題別ドクター数ランキングでTOP3に選出されるほど、まだ知られていないところなのです。

3.男性不妊症

男性不妊といっても、無精子症の男性は1%もおりません。多くはこのような場合です。
1. 勃起不全(ED)にてうまくSexできない、射精までうまくできない
2. 精子の数は少なくないが、運動率が低い、または奇形率が非常に高く、人工授精では限界がある
3. 精液量、または精子の数が極端に少ない

EDに関しては、バイアグラやレビトラ、シアリスといった薬剤で効果がある男性も多いのですが、そもそもSex自体に興味がないことも多く、マスターベーションできれば人工授精でどうにかなるケースがほとんどです。

一番問題となるのは2のケースで、これが全体の90%以上を占めています

精索静脈瘤があれば、手術が必要な程度なら手術で改善が期待されます。しかし、多くは生まれつきの特性なのか、年齢に原因があるのか、実際にはその両方が一番多いと思いますが、動きが速く形の良い精子が非常に少ない男性の場合です。

3の場合には、始めから顕微授精の適応となりますが、当院でも、2の理由により体外受精・顕微授精に進まれるご夫婦がほとんどです。


このため、男性にも最初に血液検査と体組成分析をお願いしています。この結果に基づいて運動と栄養、生活習慣を見直し、正すところは正して改善したうえで、性生活の提案や工夫が重要になってきます。
いろいろな障害がなくなり血流が改善すれば、多少なりとも精子の運動率に改善の兆しが見えてくる男性も意外と多いのです。

規則正しい生活・バランスの良い食事、それに質の良い睡眠が、
精子にとっても大切です。

規則正しい生活・バランスの良い食事、それに質の良い睡眠が、精子にとっても大切です。 当院には、男性に対しても話を聞き、また相談できるスタッフがおりますので、話をしてみるもの良いのではないでしょうか。

それでも、精子の質の改善には限界があります。その場合には、最初の方で提案しました “トライアルIVF” してみるのも一考かもしれません。精子の受精能力の有無がはっきりとします。